代表挨拶

代表挨拶

組合せ遷移アルゴリズムの共通基盤化を目指して

領域代表伊藤 健洋
東北大学 大学院情報科学研究科 教授

私が国内外の仲間と共に「組合せ遷移」の理論フレームワークを立ち上げたのは2008年のことでした.他分野の方の何気ない質問から始まった単独プロジェクトだったはずのものが,数々の出会いが重なり,今では世界的に研究されるアルゴリズム理論の新潮流にまで成長しました.

そして今回,2020年度に新設された科研費・学術変革領域研究(B)に採択して頂き,より多くの仲間と体系的・戦略的に研究するチャンスを頂きました.組合せ遷移は,まだ「若い」理論です.今回の研究領域は,その若い理論を10年後,20年後に向けて発展・成熟させるための土台作りであると位置付けています.それには分野をまたぐ協働が必須なのですが,やはり分野融合は一筋縄ではいきません.ただ,そこには苦労だけでなく,新規開拓のワクワクが常にあります.そして何より,複数分野にまたがる人的ネットワークを構築することができます.

分野融合の鍵は,やはり「いかに人と人を繋げられるか」に尽きます.有難いことに,各分野を代表する新進気鋭の若手研究者が,この領域研究に参画してくれました.本領域の研究者は,全員45歳以下であり,平均36.5歳と非常に若いのが特徴です (申請時).これは,本研究領域の終了後も組合せ遷移の研究を継続し,各自の背景分野へフィードバックをもたらすことを期待する布陣です.「組合せ遷移」を鍵として,いかにメンバーを繋げられるかが私の役割であり,そして私自身が最も楽しみにしているところです.

しかしながら,コロナ禍の影響は大きく,もどかしい思いをしているのも事実です.複数分野の研究者が「集まる」ことが本研究領域の肝であるのに,当然ではありますが,コロナ禍では「集まれない」のです.特に,海外の研究者との連携は困難を極めています.一方で,本研究領域のメンバーは全国11大学に散らばっていますが,オンラインでは頻繁に集まることが出来ています.対面での打合せには及ばないところもあるものの,これはオンラインならではの利点です.実際に会える日を心待ちにしながら,精力的に研究を開始しています.

2021年3月

Profile

2006年3月東北大学にて博士 (情報科学) を取得.同年より東北大学大学院情報科学研究科の助手,助教,准教授を経て,2020年5月より現職.広くは理論計算機科学の研究に従事し,特にグラフアルゴリズムの研究に取り組む.2018年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞,船井情報科学振興財団第17回 (2017年度) 船井学術賞,国際会議ISAAC 2008 Best Paper Award等,受賞.2020-2022年度東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー.

科学研究費助成事業-科研費-
「学術変革領域研究(B)」について

「学術変革領域研究(B)」は,次代の学術の担い手となる研究者による少数・小規模の研究グループ (3~4グループ程度)が提案する研究領域において,より挑戦的かつ萌芽的な研究に取り組むことで,これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを先導するとともに,我が国の学術水準の向上・強化につながる研究領域の創成を目指し,将来の学術変革領域研究(A)への展開などが期待される研究です.